夜になったらスイッチをオフにして、家族とゆるりと過ごして充電。〜睡眠改善インストラクター・山内陽子さんのナイトルーティン〜

自分自身のお手入れはもちろん、家族やまわりにいる人たちへのケアも大切にする。そんなコンディションを整えることに長けたプロフェッショナルたちは、一日の疲れや乱れをオフするためにどんな夜のルーティンを取り入れているのでしょうか。今回は、睡眠改善インストラクターとして活躍する、山内陽子さんにお話を伺いました。

朝は着替え、夜はメイクオフ。ルーティンがオン・オフのスイッチに

快適な睡眠のためのアドバイスを行う睡眠改善コンサルティングのほか、パーソナルカラー診断やアロマフレグランスの調合など、ライフスタイルにまつわるさまざまな提案をしている山内さん。「何をしたら自分が気持ちよく過ごせるのか」を知るためのツールとして、色や香り、住環境、睡眠について学びはじめ、それが現在の仕事につながっていると言います。“特別じゃなく、毎日そこそこ楽しかったら幸せ”というマインドを大切にし、お客さまに提案するときにも心がけているのだとか。そんな山内さんだからこそ、毎日の暮らしにはゆるりとした心地よい時間が流れています。

山内さんのウィークデイは6時ごろに起床し、グラス一杯の水を飲んで、着替えることからはじまります。そして、新聞を取りに行ったり、ゴミ出しをしたりするついでに、軽く日光を浴びるようにし、体内時計をリセットするのが朝のルーティン。快適な睡眠のために夜の過ごし方はもちろん重要ですが、実は朝の行動も大事なのだとか。

ひと通りのルーティンを終えたら、家族で朝食をとり、家事をすませて、10時半には仕事着に着替えて仕事をはじめます。山内さんにとって服を着替えることは、オンとオフの切り替えスイッチになっているそうです。

「仕事の合間には、こまめにティータイムをとります。お茶を飲むことで気持ちが切り替わり、ネガティブなことを休憩時間に持ち込まなくてすむので、私にとっては大切な時間ですね」

19時ごろに仕事を終わらせたら、メイクオフをすることでスイッチをオフ。そこから山内さんがご家族と過ごす、夜の時間がはじまります。

夜のルーティン その1

刺激やストレスを避け、家族だけの時間をゆったり楽しむ

仕事をする時は、“きちんと感が出る”服装を心がけているという山内さん。仕事を終えると、まずはメイクを落とし、どこも締め付けがないワンピースに着替えます。このルーティンをすることで、昼と夜、オンとオフのスイッチが切り替わります。これは、質の良い睡眠のためにも大切なことだと、山内さんは言います。

「体のどこも締めつけない、ゆったりとしたシルエットのワンピースは、私にくつろぎ感をもたらします。素材は、肌へのストレスにならないように、肌触りのいいコットンか麻と決めているんです」

ワンピースに着替えたら、そこからはできるだけ仕事はしないで、ゆったりとした夜の時間を楽しみます。山内さんのご家族は現在、ご主人が単身赴任、双子の娘さんの一人が海外留学中なので、もう一人の娘さんと過ごすのだそう。

「夜は娘と一緒に食事をすることが多く、その日あったことを取り留めもなくおしゃべりして過ごします。わが家はほとんどテレビを観ないので、二人でボードゲームやパズルゲームをしたり、それぞれ好きなことをしても、なんとなく一緒にリビングで過ごしていますね。どちらからともなく、“紅茶でも飲もうか”“今日はコーヒーがいいかな”と、夜のティータイムを楽しみます。質のよい睡眠のためには、一般的には夜にカフェインをとるのはNGと言われていますが、私は飲んで気持ちがリラックスできるなら飲めばいいと、そんなゆるやかなスタンスです」

そのほかにも、スムーズに眠りにつくために心がけているのが、20時以降は刺激やストレスのない時間を過ごすということ。たとえば、蛍光灯などの青白い光に当たらない、パソコンやスマホの画面はなるべく避けるようにする、大きなボリュームで音楽を聴かないなどを実践しています。ときには、照明を消してランプやキャンドルの灯りだけにし、お気に入りの香りを焚いて、ゆったり過ごすのだとか。

「日中のパフォーマンスを上げるためにも、夜は活動の熱量を上げないように、静かに、ゆっくり過ごします。そうすると、“よし、明日もがんばろう”と思えるんです。私にとって、昼と夜のメリハリはとても大切なんです」

夜のルーティン その2

精油をブレンドして、手作り入浴剤でバスタイム

毎日の入浴も、質の高い睡眠を誘うための大事なルーティン。山内さんのバスタイムは、手作りの入浴剤を入れてゆっくりお風呂に浸かることが多いとか。天然塩や重曹、スキムミルクなどに、その日の気分で精油をブレンドして入れるだけで、あっという間に手作りの入浴剤ができあがります。

夏なら爽やかなペパーミント、心配事があるときはフランキンセンス、インフルエンザなど感染症が気になる季節はユーカリ、ホルモンバランスの乱れなどでなんとなく気持ちが不調なときはゼラニウム、豊かな気持ちになりたいときはベンゾインなど、その日の気分や体調、季節に合わせて精油を選んでいるのだそう。

「お風呂は、眠る30分前までにすませます。体の中の深部体温をお風呂で十分に上げておくと、ベッドに入る頃には自然と体温が下がっていき、そのタイミングで深い眠りに入ります。入浴の前と後には、常温のお水をとるのもルーティン。夜は冷たい飲みものは避けて、常温の水や温かいお茶などを飲むようにしています」

香りも、夜のリラックスタイムには欠かせない大事なアイテム。山内さんの最近のお気に入りは、野生の香木「パロサント」。火をつけて煙をたたせると、独特の強い香りを放ちます。眠る前や気分をリラックスさせたいときに焚いているそうです。また、マッチのように擦って使えるお香も、手軽なので重宝しているとか。

夜のルーティン その3

ナチュラルカラーの、天然素材に包まれて眠る

夜のリラックスタイムはワンピースで過ごし、寝間着には寝る直前で着替えるのも、山内さんのルーティン。オンのタイミングで仕事着に着替える、オフのタイミングでワンピースに着替えるのと同様に、夜眠る前に寝間着に着替えることで、“眠るモード”に気持ちを切り替えています。

「着古した運動着や普段着を寝るときに着る方をよく見聞きしますが、あまりおすすめできませんね。ぜひ、パジャマやネグリジェなど寝間着として売られているものを選んでほしいです。それらは、寝るために作られているので、肌触りや吸汗、吸湿性など、素材や機能にそれなりの理由があるんです。寝間着選びも、よりよい睡眠のためにとても大切です」

寝室の環境づくりにも、山内さんらしいこだわりが。寝具は着るものと同様に、肌触りなどを考慮してリネンやコットン素材を選び、生成などナチュラルな色にしています。気に入った色に包まれて眠ることで、リラックスできたり、気持ちが穏やかになると言います。

仕事をする時間、夜眠るまでの時間、そして眠る時間と、それぞれに合った服装や環境を整えてメリハリをつけることで、気持ちの面でもオンとオフの切り替えをしている山内さん。快適な睡眠と目覚めのために、また次の日のエネルギーチャージをするためにも、夜のルーティンを自然な形で実践しています。これまで培った知識はもちろん、ご自身が心地よいと思える感覚から生まれた数々の知恵が、山内さんの暮らしには詰まっていました。

コラム

My Favorite〜毎日を快適に過ごすために〜

心配事があると、高い所にのぼって街を俯瞰する

「外出先では、考え事や心配事があるときは高い場所にのぼります。たとえば、ビルの高い場所にあるカフェなど。街を上から眺めることで、“自分には全部見えている、だから大丈夫!”と思え、気持ちがちょっと軽くなったり、突破口が思い浮かんだりします。

家のなかはどの場所もお気に入りですが、最近はこの椅子に座ってリラックスする時間が心地いいです。単身赴任中の主人からサプライズで届いたマッサージ器に足をのせて、一日の疲れをリセットしています」

プロフィール

山内陽子/Yoko Yamauchi

睡眠改善インストラクター、日本パーソナルカラー協会認定講師、AEAJ認定アロマテラピーインストラクターなどの資格をもち、ライフスタイルにまつわるカウンセリングやコンサルティングを自宅のスタジオにて行う。このほか、美容系の専門学校で講師をしたり、ご主人がセンター長をつとめる「山形大学・睡眠マネジメント研究センター」の睡眠にまつわる研究に参加したりと、多忙な毎日を送る。ご主人と、大学生になる双子の娘さんと4人家族。

Instagram:https://www.instagram.com/mit_die_sonne/

公式HP: https://www.33taiyo.com/

 


 

ライター/内田あり

フリーランスの編集ライター。食・子育て・住宅・インテリア・植物・ガジェットなど多岐にわたるジャンルで、ムックや雑誌、フリーペーパー、WEBコンテンツなどで執筆。夫と高校生・中学生の姉妹と4人暮らし。

(取材日:2022/08/30、 取材地:山内陽子さんのご自宅、 編集:武田明子 撮影:田尻陽子)